マイホーム購入を検討する際に家や土地を探していると一度は聞く「都市計画区域」や「市街化調整区域」といった言葉。全国各地、ありとあらゆる場所にこういった建築に関わる規定や制限のある区域が存在しています。そういった建築基準法上の規定である「地域地区」や「用途地域」について紹介していきます。
この記事の押さえ所
地域と建築基準法
冒頭でも少し触れましたが、建築制限のあるようなエリア・地域の名称についてそれぞれ個別では聞いた事があるものも多いかと思います。ですがその仕組みや全体像についてはなかなか触れる機会も少ないのではないでしょうか。
ここではまず、家を建てる上でのその土地に課せられた制限や規定について確認していきます。
建築基準法の規定
まず、建築物に関する様々な規定を定めているのが建築基準法です。そしてこの建築基準法の規定には、大きく分けると2種類が存在しています。
一つ目は“単体規定”。もう一つは“集団規定”です。
単体規定とは、個々の建築物の性能や構造、あるいは建築設備など、住まいの居住性や安全性などを確保する為の技術的な基準や規定を指します。万一この“単体規定”に反した場合でも、法的な罰則はなく、個人責任となります。
一方の集団規定とは、単体規定が建物本体に定められた規定であるのに対して、建物に関わる“外部環境”への影響に関する規定の事を指します。主に市街地の環境整備等を目的としており、その建築物を建てる周囲環境を意識したルールです。この集団規定は、都市計画法第4条1項に定められた、都市計画区域と準都市計画区域にのみ適用されます。
都市計画区域
集団規定が適応される区域のうち「都市計画区域」とは、一体の都市として整備する必要があるとされる地域です。市街地を中心にして、整備や開発を行う事で一つのまとまった都市として保全をする必要があるとされる区域の事を指します。
この都市計画区域は、都市計画法に基づき各都道府県知事が指定します。都市計画区域内でも更に、開発を進めるべきエリアと抑制をするエリアに分けるなどする事で、計画的な都市計画を立てて街づくりを進めていく事ができるとされています。
◆線引き都市計画区域
◆非線引き都市計画区域
都市計画区域はまず、これらの二つに分けられます。
更に線引き都市計画区域の中には
・市街化区域
・市街化調整区域
の二つに分けられ、これらを「区域区分」と呼んでいます。
非線引き都市計画区域は、区域区分以外の都市計画区域の事を指します。
準都市計画区域
準都市計画区域は、上記で説明した都市計画区域の外に設定される区域です。現在既に相当数の建物が建築されている場合や、開発の見込みがあるという土地を将来的に整備する区域がこれにあたります。開発が進みつつある土地でも準都市計画区域に指定しておく事で、今後許可なく大規模開発が進んでしまう事のないように都道府県側が規制をする区域です。
地域地区
建築基準法の中に集団規定が定められており、その集団規定が適応されるのが都市計画区域と準都市計画区域である事がわかりました。
そして更にその内側にあるのが「地域地区」です。各自治体が主体となり策定されているもので、21種類に分けられます。種類に応じて、建築物の用途や容積率、高さなどについて一定の基準や制限が課せられる仕組みです。
それぞれの地域の特性に合った土地利用計画を配慮する事が望ましいとされている事から、各地域に適した建築規制を定めるための指針のようなものです。
地域地区の種類
地域地区には21の種類がありますが、具体的にはどのような種類に分類されるエリアがあるのでしょうか。一覧は下記の通りです。
- 1. 用途地域
- 2. 特別用途地区
- 3. 特定用途制限地域
- 4. 特例容積率適用地区
- 5. 高層住居誘導地区
- 6. 高度地区または高度利用地区
- 7. 特定街区
- 8. 都市再生特別措置法による都市再生特別地区、居住調整地域または特定用途誘導地区
- 9. 防火地域または準防火地域
- 10. 密集市街地整備法による特定防災街区整備地区
- 11. 景観法による景観地区
- 12. 風致地区
- 13. 駐車場法による駐車場整備地区
- 14. 臨港地区
- 15. 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法による歴史的風土特別保存地区
- 16. 明日香村における歴史的風土の保存および生活環境の整備等に関する特別措置法による第一種歴史的風土保存地区または第二種歴史的風土保存地区
- 17. 都市緑地法による緑地保全地域、特別緑地保全地区または緑化地域
- 18. 流通業務市街地の整備に関する法律による流通業務地区
- 19. 生産緑地法による生産緑地地区
- 20. 文化財保護法による伝統的建造物群保存地区
- 21. 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法による航空機騒音障害防止地区または航空機騒音障害防止特別地区
代表的な地域地区の例
地域地区21種類のうち、代表的なものをいくつか紹介します。
【防災地域・準防災地域】
これらの地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とされています。
例えば建築物が密集する市街地においては、その規模や密度によって建物を耐火性の建物にする、あるいは不燃材料で建物を覆うなどして火災の危険を防除する為の配慮をしなくてはならないという地域です。
【歴史的風土保存地域】
観光地などによくありますが、歴史的風土を維持あるいは保存する為に、この区域内の建築物などを改築・増築する場合や新築建造物を建てる場合、あるいは木材の伐採や土石類の採取などの定められた一定の行為を行う場合には届出を行わなくてはならないと制定している地域です。
【生産緑地地区】
「生産緑地地区」と書かれた立て看板などを見たことがあるでしょうか。この地区は、災害防止や環境保全の為に、建築物の新築・増築・改築を行う事が制限される他、農地である場合にはそこを農地として維持しなくてはならないように生産緑地として指定された地区を指します。生産緑地地区に指定される事で固定資産税が軽減されるという特徴があります。
【用途地域】
土地や不動産に関する情報を集める際に「地域地区」と同じくらいよく目にする、耳にするのが「用途地域」です。地域地区の種類の中の一つで、その地域における住居の環境保護や業務の利便増進のために用途規制や建築基準法による建築制限などが課せられます。
用途地域
21種類ある地域地区のうち、私達の生活に最も関わりがあるのが「用途地域」と言えます。用途地域は大きく3つの枠に分けられます。
- ◆住宅に関する用途地域
- ◆商業に関する用途地域
- ◆工業に関する用途地域
3つの枠の中にも更に細かい種類の地域に分けられており、用途地域としては13種類の地域分けがされています。
住宅に関する用途地域
「住宅に関する用途地域」では下記のように更に細かく8種類に分けられています。
- ・第一種低層住居専用地域
- ・第二種低層住居専用地域
- ・第一種中高層住居専用地域
- ・第二種中高層住居専用地域
- ・第一種住居地域
- ・第二種住居地域
- ・準住居地域
- ・田園住居地域
例えば「第一種低層住居専用地域」は基本的には低層住宅の為の地域と定められており、小規模な店舗や事務所を兼ねた住宅、小学校や中学校の建築が認められています。
「第一種中高層住居専用地域」は中高層住宅のための地域とされており、住宅の他病院や大学、500㎡までの店舗などの建築が認められています。
商業に関する用途地域
「商業に関する用途地域は」2種類の地域に分けられます。
- ・近隣商業地域
- ・商業地域
「近隣商業地域」は、周辺の住民が日用品などを購入する為の施設が建てられる地域です。住宅や店舗はもちろん、その他にも小規模な工場も建てる事ができます。
「商業地域」であれば住宅の建築もできるが、基本的には銀行や映画館、飲食店や百貨店が集まる地域に指定されています。
工業に関する用途地域
「工業に関する用途地域」では3種類の地域に分けられます。
- ・準工業地域
- ・工業地域
- ・工業専用地域
「準工場地域」では軽工業やサービス施設といったものが建設できます。住居も可能です。「工業地域」ではほとんどの工場が建設可能な上住居も建築可能ですが学校や病院などは建てる事ができません。最後の「工業専用地域」は唯一住宅を建てる事ができないと指定される地域です。
用途地域の細かな割り当てにより、自分が家を建てたいエリアがどういった種類の地域に定められているのかを把握する事ができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。定められた既定についての説明が多かったので、なかなか理解とするという点では実感がわかない部分もあるかと思います。
ですが土地には建築基準法の規定に則り区域がわけられており、その中には「地域地区」というくくりがあり、さらにその中には細かく「用途地域」が定められていると把握しておく事で、これから自分が住みたいエリアが一体どういった規定の対象になる地域なのかを確認して、その後の周辺環境の発展やライフスタイルを計画する一つの指針にもなります。
難しい言葉が多い「地域地区」や「用途地域」ですが、これからの住まい選びの重要な情報となりますので是非チェックしてみてくださいね。